金属対応タグとは
金属製品に一般的なシール状の 920 MHz 帯のRFIDタグを貼りつけると、リーダから放射される電波が金属で反射をして、タグから放射される微弱な応答波は金属面からの反射波で妨害され、ほとんど検知をすることができません。
また、タグに雨などの水分が付着している場合には、電波が水に吸収されて、リーダから放射される電波も、タグからの応答波のレベルも低下します。その結果、いずれの場合にもRFIDタグの読み取り性能が著しく低下します。
最近、自動車や電機産業の生産および物流プロセスへのRFIDシステムの導入が進んでいます。プロセスでは部品を収納する多くのプラスチック・コンテナが利用されています。電子部品を収納する黒色のコンテナには、帯電防止と静電除去を目的にして炭素が混入されていますが、炭素には導電性があり電波を吸収する性質があります。そのため、炭素入りの容器に RFID タグを貼り付けると、アンテナから放射された電波を吸収するため、水分と同様にRFID タグの読み取り性能が低下します。低下をする度合いは、プラスチックに含有されている炭素の量に依存します。
そのため、UHF帯のRFIDタグを金属面に取り付けて使用したり、水分の多い環境で使用するためには、タグに特別な設計を施す必要があります。
欧州最大の研究開発企業である英国QinetiQの研究者達が設立したOmni-ID社は、QinetiQの前身の英国国防研究庁の時代から研究されていたプラズモン構造体をUHFタグに組み込むことにより、優れた特性をもつ金属対応タグ技術を開発して特許を取得し製品に応用をしています。
またタグに雨などの水分が付着している場合には、水による電波の吸収だけでなく、周波数シフトも問題になります。タグが応答する周波数は、多くの場合920 MHz 近傍にピークを持たせて設計されていますが、水分が付着すると応答のピークがシフトするために読み取り距離が短くなります。従って屋外で運用されるRFIDタグを評価する際には、タグに水を付着させて読み取り試験を行うことも必要になります。
また最近は、工場の生産プロセスで生産部材や仕掛かり品の所在位置を把握したいというニーズが増えてきています。工場での部材や仕掛かり品は、個品ごと、トレーやプラコンなどの容器単位、あるいは台車やカゴ車単位など、さまざまな形態で保管されています。多くの場合、管理対象物は保管場所の情報と組み合わせて記帳したり、その情報をPCに保存したりしていますが、現場では必ずしもその情報通りに保管されているとは限らず、仕掛かり品の数量が多いケースでは工場内を探し回るような、非生産的な作業も多くなっているのが現実です。生産プロセスへのIoTの導入による工場の見える化を推進することにより、生産性を飛躍的に向上させようとする取り組みが活発になっています。
そのようなケースでは、対象物にビーコンなどのアクティブタグを取り付けて所在の検知を行う方法もありますが、アクティブタグは高価なために、特に対象物が多い現場では導入コストが大きくなって現実的ではありません。最近は価格が安いUHF帯のパッシブタグを位置の把握に利用しようとするケースも多く、成果を上げている事例も増えてきています。所在場所を把握する手法としては、固定型のRFIDリーダと各種のアンテナを組み合わせて位置をリアルタイムで検知する手法と、ハンディ・リーダにより必要に応じてバッヂ処理を行う手法とがあります。どちらの手法が適しているかは、管理対象物とRFIDタグの取り付け方法ならびにその保管状態、さらにはシステムの要件や導入コストなどから判断を行うことになります。
1960年代に米国での実用的な利用が始まったバーコードに代表される自動認識技術では、わが国で開発されたQRコードを除くと、ほとんどの技術が米国で開発されています。また米国で普及した自動認識技術は、数年遅れてわが国でも普及期に入る傾向があります。 米国では、2010年ごろからUHF帯のRFIDが産業や流通の広い分野において急速に普及しましたが、わが国での普及は大きく遅れていました。
2012年7月に電波法が改正されて、UHF帯RFIDの周波数が950 MHz帯から920 MHZ帯に移行しましたが、それを契機にしてわが国でのUHF帯RFIDの利用も普及が拡大する兆しがあります。これは過去に開発された自動認識技術のなかでもUHF帯RFIDが極めて画期的であり、その優れた特徴が産業界に認知されるようになったことや、利用する周波数帯が米国やアジア各国と同じ帯域に移行したことにより、RFIDタグやリーダライタ、アンテナなどを海外とほぼ同一の規格で設計し利用することが可能になったことが影響をしています。
しかしRFIDシステムの構築には、バーコードに比較すると高額な費用を要することが課題であり、今後の普及を加速させるためには、RFIDリーダライタやアンテナなど、システムの構築に必要な機器の低価格化が求められています。
金属対応タグの利用に際して:
Omni-IDおよびXerafyの金属対応タグは、タグの裏面全体が金属に接触していることを前提にして特性の調整を行っており、そのように取り付けるのが本来の使用方法です。 円偏波アンテナを用いて読み取りを行う際、その状態でタグの取り付け方向(上下・左右)の影響を最少に抑えられます。 タグ裏面の一部分(範囲)だけが金属に触れ、他の部分が浮いている状態では読み取り性能は低下し、取り付ける方向によって性能も変化して一様性が失われます。 この点を特に注意して安定したRFIDタグの運用を行うことをお勧めします。
ユーザメモリの利用について:
RFIDタグの運用においてユーザーメモリの利用を検討されることもありますが、EPCエリアに比較するとユーザーエリアへの読み書きには長い時間を要するうえ、ユーザーメモリを使わずにすべての情報をサーバーで管理することが可能なケースも少なくありません。また、タグに内蔵されているRFIDチップは時代とともに更新が行われ、それに伴ってユーザーメモリの容量が変更されることも少なくありません。RFIDの運用でユーザーメモリを利用していると、そのような際にシステムの更新まで必要になることもあります。従ってユーザーメモリを利用する場合には、利用しなければならない必然性があるか、チップの仕様が変更された場合にも容易に対応できるかなどを考慮したうえで利用する必要があります。
IQ タグ・シリーズ | データセンター・オフィスのIT資産管理に利用、厚みを抑えたスリムなラインナップ。 |
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Flex タグ・シリーズ | 製造コストを抑えた屋内・半屋外向け金属対応タグ、オフィス・構内の備品管理全般に利用 。 |
Exo タグ・シリーズ | 目的に適した耐環境性とケース形状をラインアップ、工具備品・産業資産・通箱追跡に利用。 |
Fit タグ・シリーズ | 距離性能を保ち小型化に注力、工具備品やレンタル機器追跡、装置内部への組付けも容易。 |
Adept タグ・シリーズ | スチールワイアーやパイプ等への長期固定取付に適した頑強な専用設計品。 |
PB タグ・シリーズ | FR4ガラスエポキシを基材に用いた金属対応RFIDタグ、コストメリット高く幅広い用途に利用可。 |